
「リア王」って、イギリスでやった舞台の録画を以前に映画館で観たことがあった。地元豊橋の「リア王」は庶民らしくアリの話で、役者はみな、オーディションで選ばれた市民。その多くは素人らしい。2000円だって言うから劇場の名の通り「プラット」行ってみたら、けっこうよかった。
ひとが素人から玄人に変身する瞬間て、ほんとにあるのかしら。
例えばおいしい日本料理なんかに出会うと「これは家じゃちょっと食べられないなーさすがだなー」なんて思ったり、かと思えば看板と形はプロ仕様なんだけど、味はなんだか一辺倒だなってことも多々あるし、逆に最高においしい家庭料理って料亭の味ほどに奥深いもの。
ひとつの分野の中にも自分が玄人でいる場所と素人に立ち返る場所を、みな行ったり来たりするもんだとわたしは思う。学ぶ姿勢があるほど、素人に帰る機会も増えるものだし。
やってみたいと思うことはつべこべ言わずどんどんやってみるのがやっぱり楽しい。素人にしか得られない余白を埋めていく作業がなきゃ、仕事も遊びも退屈だ。それを再確認させてくれるような舞台だった。
芝居見物はそんなこと抜きにやっぱりおもしろくて、講演後次の芝居のチケットを買って劇場を出て、余韻に浸りながら帰路に着いた。
次の舞台が楽しみ。