クカバラベーカリー
雑記帳

Kookaburra

bakery

リャマの横顔。

Feb 1, 2020 | ボリビア, 旅の便り

ごつごつと伸びる石の坂道。この辺りの岩石はミネラル分が豊富で、ところどころに鮮やかな緑青が混じる。前を行くのは大きな風呂敷を担いだ女性で、ボリュームのあるピンクのスカートから日に焼けた細い足首が覗いている。カラフルな風呂敷もだいぶ見慣れた。日用品から薪まで何もかもみな丈夫なこの風呂敷に包んで運ばれる。土産物も一式包んで適当なところに店を開くのがここのスタイルで、皆そうして小さな島の細く続く道を行き来する。息を切らして上まで登ると反対側の湖が姿を現す。ティティカカ湖はおよそ3900メートルのところにある巨大な湖でペルーとボリビアを跨いでいる。

コパカバナはなんだかディズニーランドのようでそこへ来て町の真ん中には巨大な宗教施設がどっしりを腰を据えている。ポトシからの長旅だったこともありすっかり気後れしてしまった。その岬から船で1時間半のところに「太陽の島」、イスラ・デル・ソルはある。到着するとまず迎えてくれるのがインカ時代に建てられた立派な石の階段。横を流れる水の音が心地いい。最初のインカ王が生まれたというこの島はかつて帝国の重要な聖地だった場所。ティティカカという名はそれ以前に付けられた名で、ここには紀元前三千年前から人が住んでいたという話もある。

坂の上に登ると細く伸びる島の形が見えてくる。丘の斜面に無数の線を引く棚田。何百年ものあいだ踏み固められた細い道が島の端まで続いている。初めて訪れる旅行者ももう何十年もこの島に生きる人も、湖からの風が吹く小道の真ん中でふと足を止める。そうゆう瞬間に何度か立ち会った。

本島から離れたこの島には自然と地産地消の文化が生きていて、工場から来たセーターを売る横で毛糸を紡ぐ人がたくさんいる。毛から紡いで大事に編んだセーターは叩き売りなんかできない。靴下ひとつ編むのだって大変なのだ。リャマやロバがうろうろと道端の草を食んで、夏の雨季だけれど草とりする人の姿はない。日本に住む母が、草取りが面倒なので庭に牛を飼おうかなんて冗談で言っていたことがあった。最近じゃあ路肩をコンクリートで固めたり薬をまいたりする人も多いとぼやいていたっけ。地域でリャマを放し飼いするなんて意外とありかもしれない。

水辺に降りると見事に毛刈りされたリャマがそこだけ手付かずで残されたふかふかの顔をこちらに向けた。君の刈られた毛はきっとどこかこの近くで紡がれて暖かいセーターになっているのだ。深く青い湖に黄昏る何とも言えないリャマの横顔。やっぱりリャマにはこんな場所がよく似合う。