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Travel note 

個人で旅するサンティアゴーSantiago

2019年5月

アンデス山脈に囲まれたサンティアゴ。充実した美術館や大規模なマーケットなど大都市ならではの面白さと、街の中心に乱立する丘や背景にそびえる山々との美しさを兼ね備えたとてもユニークな街。街歩きを楽しんだ翌日は日帰りのハイキングやワイナリー巡りなど、ほかの都市にはない楽しみ方ができる。サンティアゴ観光をより楽しむならチリの歴史や政治のことを少し知っておくといい。スペイン語もしくは英語が話せるならTours 4 Tipsの街歩きツアーがおすすめ。支払う額は満足度と経済事情に応じて自分で決める。相場はおよそ5000チレアンペソ(およそ700円)で、この街の歴史から政治までいろんな話を聞けるので着いてすぐに参加するとその後の街歩きに奥行きが出て面白い。

 

交通手段

公共交通機関を利用するにはBip!カードが必要。窓口でこのカードを購入し、残高が少なくなれば機械でチャージする。サンティアゴ観光は観光スポットを網羅した地下鉄やバスなどの公共交通機関が便利だ。そのほか自転車専用道路も整っているので、晴れた日は宿泊施設やレンタサイクルの店で自転車を借りて観光するのも楽しい。街中で見かけるオレンジの自転車Bike Santiagoはラ・モネダやアルマス広場にある店舗で登録を済ませれば1日5000チレアンペソ(およそ700円)からそのまま使え、空いているスタンドに乗り捨てできるので便利だ。ちなみにサンティアゴではヘルメットの着用が法律で義務付けられているので無着用の場合には罰金がとられる交通量も多いので自らの安全のためにもヘルメットを着用しよう。


見どころ  

 プラサ・デ・アルマス(Plaza de Armas )

サンティアゴの市街はプラサ・デ・アルマスの広場を中心に広がる。歴史ある建造物にぐるりと囲まれたこの広場。歴史博物館(Museo Historico Nacional)は長いこと修復中で現在閉館中だが近日開館予定。すぐ隣には立派な中央郵便局があり、郵便博物館も併設されている。少々混んではいるが、ここから絵葉書を送ってみるのもいいかも。この広場からすぐのところにある丘セロ・サンタルシア(Cerro Santa Lucia)は1500万年前の火山のあと。スペインからやって来たPedro de Valdiviaがこのあたりを征服し、現在のサンティアゴを建てた場所だ。晴れた日には丘の上から街が見渡せ、散歩コースにはちょうどいい。同じ地域にあるTeatro Municipalはの歴史ある美しい劇場。スペイン語が分からなくてもオペラやバレエなど演劇以外の演目が豊富で格安のものも多いので興味があれば行かない手はない。直接劇場に立ち寄って窓口でチケットを購入しよう。

 

 ラ・モネダ(Palacio de la Moneda)

 

市街の中心に位置する大統領執務室。もともとは1805年に造幣局として開かれたもので、(現在チリの紙幣はオーストラリアで印刷されている。)1845年から大統領執務室として使われるようになった。1973年アウグスト・ピノチェの主導する軍事クーデターにより建物は爆撃され当時の大統領サルバドール・アジェンデはこの官邸の中で国民にその最後のスピーチを届けたのちに命を落とした。(軍事政権解体後の調べで正式には自殺と認定された。)その後当のアウグスト・ピノチェにより建物は修復され、軍事政権が去った現在も大統領執務室として使われている。ラ・モネダ南側にある広場の下にはこちらも立派な文化センター(Centro Cultural de la Moneda)が広がり、絵画や映像の視覚芸術を中心に展示している。随時行われる特別展も面白い文化センターだ。(3時以降は入場料無料。)周辺にはこのほかにもいくつかの美術館や博物館があり中でも面白いのがヨーロッパ占領以前の芸術作品を集めた博物館Museo de Arte Precolumbiano。この地域のみならずラテンアメリカ全域を網羅した展示は見ごたえ抜群。毎月第一日曜日は入場無料。

 

 森林公園(Parque Forestal)/国立美術館(Museo de la Bellas Artes)


街の真ん中を東西に走る森林公園は都会のオアシスそのもの。公園内には19世紀からのラテンアメリカ芸術を集めた人気の国立美術館(Museo de la Bella Artes)がある(入場無料)。食事をするなら魚介が有名な中央市場(Mercado Central de Santiago)や新鮮な農産物が揃うラ・ベガ・セントラル(La Vega Central)へ行ってみよう。ラ・ベガ・セントラルはスーパーでは見かけない品種の野菜や果物が売られ、見て周るだけでもおもしろい。料理が好きなら地元の農産物を買って調理してみるのもとっておきの体験になる。どちらのマーケット内も安くておいしい食堂がたくさんあるのでランチにぴったりの場所だ。

 

 サン・クリストバルの丘(Cerro San Cristóbal)/

 バリオ・ベジャビスタ(Barrio Bellavista)

 

都会の真ん中にそびえる丘サン・クリストバルは観光客のみならず地元の人にも人気の散歩コース。晴れた日に張り切って出かけよう。自転車専用の道もあるのでマウンテンバイクが好きなら一日自転車を借りて登るという手も。息を切らして着いた頂上からは山々に囲まれたサンティアゴの街が360度ぐるりと見渡せる。(ケーブルカーも走っている。)歩き疲れたらレストランやカフェが並ぶふもとの地区(Barrio)ベジャビスタで休憩しよう。失われつつあるチリの食文化を今に伝えるPeumayénは手ごろな値段でおいしく珍しい料理が楽しめるおすすめのレストラン。La Chasconaもこの地区にある。サルバドール・アジェンデとともに民主的な社会主義政権の運営に奮闘した彼の生活を垣間見てみるもいい。

チリの北から南まで材料の異なる「パン」を再現したプレート

腹ごしらえのあとはベジャビスタをぶらぶらと歩いてカラフルなストリートアートを鑑賞しよう。国内外にファンを持つ著名な詩人で政治家だったパブロ・ネルーダ(Pablo Neruda)が愛人のために建てたという

 

 記憶と人権の博物館(Museo de la Memoria y de los Derechos Humanos)

 

 

軍事政権により無下に扱われた人権と奪われた命を悼み、その記憶を辿る博物館。1階から3階まで盛りだくさんの展示はこの国の経験した軍事政権を垣間見るのにこの上ない場所だ。サルバドール・アジェンデの肉声を含む軍事クーデターの様子や政治犯として強制収容所に送られ生き残った人々の証言映像など、生々しい資料は言葉が違っても触れてみる価値大。入場は無料で、スペイン語と英語は音声ガイドが借りられる。とにかく資料が多いので借りるのがおすすめ(有料)。その他前もって(もしくは訪問後に)勉強するのなら、サルバドール・アジェンデパブロ・ネルーダビクトル・ハラなど、軍事政権と対峙した著名人について探ってみると入りやすい。

 

チリグルメ

アルゼンチンと同じくチリでもエンパニャーダはお馴染みのストリートフード。そのほか人気なのはホットドックに潰したアボカドとうすいマヨネーズをたっぷりと塗ったコンプレート(Completo)やバーガーのパンに薄切り肉とこちらも同じアボカドとソースを挟んだチュラスコ(Churrasco)などお腹にガツンと来るストリートフードが豊富だ。海沿いに面したこの国は魚介も有名なので、ペルーのお刺身セビーチェ(Ceviche)もよく食べられる。鶏がらや牛肉がベースになった暖かいチリのスープ、カスエラ(Cazuela)は野菜とご飯が入ったおじやのようでとてもおいしい。

おじやみたいなカスエラ。

パクチーは”シラントロ”。苦手な人は「シン(Sin) シラントロ」で注文しよう。

たっぷりのフライドポテトとこちらもたっぷりのテンダロインに炒め玉ねぎと半熟の目玉焼きやスクランブルエッグをのせたチョリジャナ(Chorrillana)はパブの定番料理だ。

ガッツリのパブ料理「チョリジャナ」

飲み物は安くておいしいワインと、ピスコと呼ばれるぶどうから作られたリキュールをライム果汁で割ったピスコサワー(Pisco Sour)も少々アルコールが強いが甘酸っぱくて癖になる。このピスコサワーはチリとペルーの間でどちらがはじめに作ったかの論争があるが、ペルーのピスコサワーは卵白とビターが入っているのに対してチリのそれはライム果汁とピスコのシンプルなもの。そのほか調理した麦と桃のシロップをあわせた少し奇妙な飲み物モテ・コン・ウエシジョ(Mote con huesillo )も地元で人気の飲み物だ。

 

ラ・クエカ(La Cueca)

男女が手に持ったハンカチを振りながら踊るラ・クエカはペルーやボリビアを含むこの辺り一帯の土着の踊りにアフリカやヨーロッパのものが混ざって生まれたもの。触れそうで触れあわない動きや地面を打ち鳴らす強いステップはフラメンコに似ている。軍事政権当初、門限や集会の禁止令などで労働者や貧困層の社交場であったラ・クエカの集まりは制限されたが、その後皮肉にも軍事政権のパレードに用いられアウグスト・ピノチェによって正式なチリの踊りと認定された。同じ軍事政権時代、家族を奪われた女性たちがその帰りを待ってひとりで踊るら・クエカが政権に対する静かな抗議として広まり、チリの情勢を世界中に知らしめ軍事政権を終わらせるきっかけのひとつとなった。

 

ワイナリー巡り / ハイキング

山々に囲まれたサンティアゴは街からのハイキングやワイナリー巡りも気軽に楽しめる。公共交通機関を利用して日帰りできるワイナリーも多いので、晴れた日には街から出てワイナリーでゆっくりと1日を過ごすのも贅沢。1546年から400年以上の歴史を持つCousiño Maculやもう少しこじんまりとこだわりのワインを楽しめる Viña Aquitaniaは街から15キロほどのところに隣接しているので、バスやタクシーまたはウーバーを使って両方訪れることができる。公共交通機関が通っていない山々へのハイキングは基本的にツアーに参加するのがいいとされている。有名なのはアンデス山脈の渓谷Cajon del Maipoなどで、ハイキングのあとに温泉が楽しめるツアーなんかも街からたくさん出ているので(少々値段ははる)、サンティアゴの街でツアー会社をチェックしてみよう。

おまけ

美術館やストリートアートなど、サンティアゴの観光を存分に楽しむならチリの歴史を少し知っておこう。チリは冷戦の巻き沿えになったラテンアメリカの国々の中で、初めて自由選挙による社会主義政権が成立した国。貧富の格差が凄まじく特に地方での貧困が蔓延していた1970年、サルバドール・アジェンデ(Salvador Allende)が大統領に選ばれた。社会主義的な政策を実施したアジェンデ政権だが、財政状況に見合わない支出の拡大と合衆国からの経済制裁などでチリの経済は更に困窮し、反社会主義的な富裕層のあいだで不満も高まっていった。冷戦の最中、アジェンデ政権は孤軍奮闘のまま3年後の1973年にアメリカ合衆国政府の支援を受けた陸軍司令官アウグスト・ピノチェ(August Pinochet)が起こしたクーデターにより倒される。アジェンデが亡くなった同じ日、たくさんの人々が軍に殺されまた強制収容所に連行された。チリの社会主義運動を率先した一人で音楽家だったビクトル・ハラも同じ日に当時のチリ・スタジアムに連行されたのち虐殺されている。彼のドキュメンタリー「リマスター:ビクトル・ハラ」をネットフリックスが制作配信しているので、興味があれば観てみよう。その後1990年までの17年間、ピノチェの軍事独裁政権は人々を苦しめただけでなく、公共サービスをことごとく民営化し他国企業に売り払ったため、チリの経済は現在も利益の横流れ状態なのだ。軍事政権がまともに裁かれなかったこの国の現政権は、かつての社会主義政権や軍事独裁政権の歴史を伝えるのにいまも消極的。それでもサンティアゴの街を歩けばかつて軍事政権と闘った人々の姿を鮮やかなストリートアートに見ることができ、民主主義に対する人々の思いはサンティアゴの街角に点在している。

今も敬愛されるビクトル・ハラ

 

地図

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