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Travel note 

パタゴニアを歩く。ーPatagonia

2019年4月
4月中旬、ブエノスアイレスから飛行機で南部エルカラファテの町に降り立った。観光シーズンも終わりに近づく初秋のパタゴニアはもう冬の気配。朝晩の寒さは身に応えるけれど、心震える山の赤の鮮明さは暖かさにも代えがたいもの。おそよ1か月のパタゴニアの旅。そのまま離れられなくなる人の気持ちがよくわかる。またいつか戻ってきたい場所ができた。

 

パタゴニアで役立つのがMaps.meという携帯電話のアプリ。街歩きには個人的に交通機関も検索できるGooglemapがおすすめだが、ハイキングルートの検索ができてオフラインマップで使用できるMaps.meは山歩きがメインになる田舎で重宝すること間違いなし。
ちなみにろくに情報を集めないまま飛ばしてしまったのだけど、世界最南端の都市ウシュアイア(Ushuaia)Parque Nacional Tierra del Fuegoなど見どころ満載らしい。次回はきっと!

訪問時期
11月から3月の短い夏の時期に世界中から旅行者が集まる。4月に入ると気温はぐっと落ちるが人も減り宿泊施設も安くなる。雨の多いパタゴニアだが、天気に恵まれれば紅く色づく秋の山々はちょっと感動してしまう。日数が限られているならやはり雨が降っても比較的行動しやすい夏の時期。晴れ間を待つ時間の余裕があるなら、観光シーズンぎりぎりを狙うのも悪くない。ただ4月以降はバスなどの手段が限られてくるので事前の確認を怠らず。どの時期にしても雨具の用意は必須だ。

周り方
一重にパタゴニアと言ってもアンデス山脈を跨いでアルゼンチンとチリとの国境を北から南へ縦断する大きな地域。国境を跨いでいることもあり意外と移動が不便なところもある。今回はアルゼンチンからエルカラファテに入り、その後下記のように周った。青はチリ側。

エルカラファテ→トレスデルパイネ(プエルトナタレス)→エルカラファテ→エルチャルテン→エルボルソン→バリローチェ→オソルノ(※お勧めしない)→プーコン

ブエノスアイレスからプエルトナタレスへは飛行機が飛んでいないので、チリ側から入るにはさらに南のプンタアレナス(Punta Arenas)へ飛ぶことになる。国境を何度も跨ぐのは面倒だけど、結果としてはなかなかいい行程だった。ウシュアイアへ行くならやはりそこをスタート地点に据えるのがいいだろう。チリ側をちなみにチリの検疫はバスでもめちゃくちゃ厳しいので、罰金などとられないよう食べ物の持ち込みは慎重に。

補足だがエルチャルテンから北上してチリ側へ渡るのに、徒歩または自転車(またはヒッチハイク)とボートで国境を越えチリのオヒギンス(O’Higgins)という町まで行く方法がある。(その後ボートでPuerto Monttまで北上するのが人気のコース)なんでこんなことをするのかと言うと、湖をまたぐ景色の美しさはさることながらちょっと変わった体験が楽しめるというのと、この方法で国境を渡るとバスの旅ではすっ飛ばしてしまうチリ側の町々を通って行けるから。筆者はこの方法で国境を渡る計画をしていたのだけど、オフシーズンに入っていたため国境付近のボートがちょうど終わってしまい断念。ホステルの人曰くなかなか大変らしいが、時間があるならこんな方法を検討してみてもいいかも。辺鄙な場所なので旅行者のブログや宿泊施設でしっかり情報を集めることが重要。

予算
パタゴニアはアルゼンチン側が断然安く過ごしやすい。トレスデルパイネは飛ばしたくないが、予算の少ない旅行者はアルゼンチン側に重点を置いて周るほうがストレスが少ないだろう。私たちの旅の予算は1日50豪ドル=3800円だが、移動やツアーなどを含めるとパタゴニアではそれを優に超えてしまった。チリ側のトレスデルパイネやプーコンは公園の入場料に高いチップ、その他もろもろのアトラクションにいちいちお金がかかるが、例えばエルチャルテンやエルボルソンなどアルゼンチン側の町は食費と宿泊費(私たちの場合およそ20豪ドル=1500円)だけで十分楽しめるので節約しやすくのんびりと滞在できる。

見どころ
Torres del Paine(トレスデルパイネ)/チリ

 
チリ側一番の見どころと言えるトレスデルパイネ国立公園。メインのトレッキングはWトレックOトレックでどちらも文字通りの形に延びるトレックだ。105㎞の円になっているOトレックは1週間から10日のハイキングで、キャンプギアが不可欠。Wの形をしているWトレックは、ベーストレス(トレスのふもと)をはじめとする3つの渓谷へ続く道で、80㎞の道を山小屋(Refugio)やキャンプ場に泊りながら(どちらも事前の予約が必要)一続きに歩くこともできるし、公園内のホテルや最寄りの町プエルトナタレス(Puerto Natales)に滞在してそれぞれの渓谷へ日帰りで訪れることもできる。プエルトナタレスに滞在の場合にはターミナルから出発するバス(往復15000ペソ、日本円で約2500円)で国立公園へ。バスのチケットは大抵の宿泊施設で予約できる。到着したらそのまま案内所で公園内の注意事項など説明を受け、地図をもらってシャトルバスでトレッキング出発地点へ向かう(現金払いのみ)。キャンプの場合にはテントなど必要なものを持参するかもしくはプエルトナタレスにいくつもあるキャンプ用品店でキャンプ用品が一式借りられる。ただ、キャンプ場を含むトレスデルパイネの宿泊施設はすべて私営で3つの異なる会社 (CONAF/Vertice Patagonia/Fantástico Sur) が管理しており、予約したい施設に合わせてそれぞれのウェブサイトもしくはプエルトナタレスにあるオフィスから予約しなければならないのでこれがけっこう面倒。様々なアドバイスを考慮して筆者はキャンプを選ばなかったけど、感想としては手配が面倒でもキャンプする価値は十分にあったと思う。数日間のハイキングは外から見えない場所まで行くことができるし、人も断然減るので壮大な自然をゆっくりと楽しめる。冬のキャンプが平気なら、観光シーズンの去り行く4月に訪れ、現地でキャンプ場の手配をするのもありだろう

El Calafate(エルカラファテ)

ブエノスアイレスからの飛行機が降り立つエルカラファテは人口2万人と、パタゴニア南部の町としては大きく旅行者にとってもハブ的な場所。名高い氷河ペリトモレノ(Glaciar Perito Moreno)もこの町からの日帰りが一般的で、たくさんの旅行会社がツアーを運営している。スペイン語や英語が話せるならおすすめはガイド付きの日帰りツアー(およそ1600ペソまたは4300円)。ガイドと言っても行きのバス(片道およそ1時間)でこの地域に生息する動植物のことや氷河の成り立ちやなんかを教えてくれ、あとは好きに観光し帰りのバスに集合するというもので、値段も手ごろ。人気の高い観光地なのでなるべく人込みを避けるため出発時間が早めのものか、もしくは遅く出て遅く戻ってくるものを選ぶといい。そのほかにも、送迎のみのもの(およそ800ペソまたは2000円)や、氷河の上を歩いて渡るBig Icetツアー、ミニトレッキングや氷河に接近するボートツアーなんかもあるので、エルカラファテの町に着いたらまずは宿泊施設でオプションやおすすめのものを聞いてみよう。大抵はツアー会社と提携し予約までしてくれる。(どこも大差はないみたい。)パタゴニアのツアーは基本的に入場料などが含まれていないので、その用意も。現地にはカフェが一軒。値段が高くおいしくないと悪評高いので、ここは雨の日の避難所にとどめてサンドウィッチなど事前に調達していくのが賢い。晴れた日に割れ落ちる氷河を眺めながら味わうサンドウィッチは格別。地球温暖化の文字が頭をよぎるが、ペリトモレノは後退していない(むしろ前進している!)数少ない氷河のひとつなんだって。理由を巡っては今も議論が続いておりはっきりしていないらしい。

ぱきーーーーーーーっと氷の割れる音が響き渡る。


San Carlos de Bariloche(バリローチェ)

 

パタゴニア地方アルゼンチン側最北端の町バリローチェ。国立公園Nahuel Huapi National Parkの中に位置するこの町はスイスから多く移民が入ってきたためいまもスイス風の建築が立ち並ぶ町として知られている。ここを出発点にパタゴニアを周るも、ここを最終目的地にするも、町の中心に建つMuseo de la Patagonia(パタゴニア博物館)には一度足を運ぶべし。小さな博物館だが内容の充実度が高く、パタゴニアの動植物ならびにMapuche(マプチェ)をはじめとする原住民の暮らしについての説明が写真や雑貨を交えて展示されていてとても見応えがある。ハイキングならNahuel Huapi National Parkのほか、日帰りでVilla Llao Llao Villa La AngosturaIsla Victoriaなど訪れることができる。ヨーロッパからの移民が集まるバリローチェはRapa Nuiなどチョコレート専門店やCafe Deliranteなどコーヒー専門店でも有名。歩き疲れたら町の北に広がる湖Lago Nahuel Huapiのほとりに座って景色を楽しんだらおいしいチョコレートやコーヒーで一休みするのも最高に贅沢♥

El Bolsón(エルボルソン)

パタゴニアを南からの上がってバリローチェに行くのなら是非立ち寄りたいのがエルボルソン。清らかなRio Azul(青い川と言う意味)が流れる、山々に溶け合うような町。交通手段が乏しく僻地だったエルボルソンには70年代ブエノスアイレスからヒッピーたちが移り住み、その生き方や文化が町のアイデンティティを作りあげてきた。道路が拡張され町が大きくなった今もしっかりとその空気をのこすエルボルソンは表現者や自然と共生する生き方を求める人が集まる場所になっている。
メインのハイキングは、エメラルドグリーンに輝くRio Azul を存分に楽しめるCajón del Azulへ続く道。途中の道に点在する山小屋は宿泊が可能で、数日間のハイキングなら更に奥まで進むことができる。食べ物も手作りのビールもあり美しい川沿いに建つ山小屋は日帰りでも是非立ち寄りたい。
El Bosque Talladoはこの町のヒッピー文化を象徴する場所。1978年に起こった山火事で寂しくなった山を復活し町の経済を振興する目的で、1998年からMarcelo Lópezをはじめとする地元のアーティストたちが焼かれた木々をそのまま彫刻にしてしまおうというプロジェクトを立ち上げたのがはじまり。その後外部からのアーティストの助けも加わり一大彫刻の森になった。
Plaza Paganoで火曜、木曜、土曜(夏季は日曜も)開かれる手作り市も見逃せない。手づくり雑貨だけでなく、地産地消の進んだ地域なだけあり、地ビールやストリートフードなどもこだわりのお店が多く出る。マーケットは断然週末が楽しい。オフシーズンになると店数はずっと減るが、人も少なくなるので散歩にちょうどいい。
時間があるなら街から歩いて行けるアースシップ(Earthship)を訪れるのもおすすめ。グラスボトルやタイヤなどの廃材を使用した低エネルギーの住宅や持続可能な暮らし方を提案している。日本を含む世界各地に支部を置くアースシップはボランティアとして滞在し家づくりを学ぶこともできるし、敷地内に建つ宿泊施設(とても素敵!)に滞在することもできる。ふらりと立ち寄るだけでも快く案内してくれる。
ちなみに有機農業やモノづくりが盛んなだけありエルボルソンでは有機野菜から手作りのヨーグルトやチーズまで基本的なものはここで揃う。もちろん天然酵母のパンも。町の南端にあるAlmacén de Panesは一度食べたら必ず戻ってきてしまうこだわりのパン屋さんだ

Pucon(プーコン)

パタゴニアチリ側の北に位置するプーコンはビジャリカ火山(Volcán Villarrica)のふもとに広がる町で。バーリロチェやエルボルソン同様、夏は登山者が冬にはスキーヤーやスノーボーダーがやって来る年間を通してにぎやかな場所。晴れた日、町の南にどっかり構える火山や周辺の湖はまるで富士湖畔のよう。プーコンの見どころはもちろんこの火山で、Mawida AdventuresSummit Chileなどガスマスクを装着して火口まで迫るツアーを提供している旅行会社がたくさんある。(個人では登れない。)相場はおよそ80000ペソ(約13000円)と安くはないが、頭のてっぺんからつま先まで必要な装備はすべて提供され、ガイドも最後までしっかりと面倒を見てくれるので安心。ツアー前日に装備のサイズ合わせや(硬いスノーブーツのサイズ合わせは特に大事!)その他事前の確認(リフトに乗るのに現金がいるよ。など)をして、翌早朝、宿泊施設へ送迎に来てくれる。
ビジャリカ火山のあるParque Nacional VillarricaParque Nacional Huerquehueなどの国立公園内にはほかにも様々なコースがあり、キャンプをしながら数日間のハイキングを楽しむこともできる。

 

遠く望むビジャリカ火山✨Parque Nacional Huerquehue

個人的に一番気分が盛り上がったのが町の周りにたくさんある温泉!立派な火山から湧き出るお湯はハイキングで疲れた体に染みる。人気の高いTermas Geométricasはなかなか混むが、火山に近いので泉質もよく、切り立った岩の間を長く伸びる温泉は日本の温泉とはまた少し違う雰囲気。レンタカーでなければ町にあるツアー会社か宿泊施設で予約を。送迎とチケットでひとりおよそ3500ペソ(5500円)。このほかにも温泉施設はたくさんあり宿泊施設を持つところも多い。もちろん裸じゃないよ!

温せーーーーん♪

ちなみにプコンの町での外食はバックパッカーにはなかなか高いので基本的に自炊だったが、Puras Pavadasのエンパニャーダは美味で食べ応え抜群。油で揚げてあるのでお腹いっぱいになる。

El Chalten(エルチャルテン)

パタゴニアでも一番心に残っている場所がエルチャルテン。チャルテンとは原住民Tehuelches の言葉で「霧にけぶる山」という意味で、現在広くフィッツロイとして知られる霧をまとう山が、この町の名の由来。壮大という言葉がぴったりな山々もひなびたエルチャルテンの町も、来る人をしばらく留まりたくさせる懐の深さがこの場所の魅力かも。国立公園は入場料無料で、ハイキングコースも豊富。町からそのまま伸びているのでとても行きやすく、体力や気分に合わせて楽しめる。長距離バスでこの町に入るとそのまま国立公園の案内所へ誘導され注意事項など簡単な説明をしてくれる。晴れていても山の頂上は強風が吹くので気を付けて。
安いホステルでも大抵きれいで暖かいのがうれしい。以下は日帰りで行けるハイキングコース。さらにじっくりキャンプをしながら楽しめるコースはこのほかにもいくつかある。

⛰Laguna de los Tores(26㎞)
最後の傾斜がすこし急な雪道(夏はそうでもないらしい)なので、ちゃんとしたトレッキングシューズが必要。ポールもあるといい。長い道のりなので朝早く出発すること。フィッツロイ(チャルテン)の山を間近に拝める頂上は最後の一押しする価値ありだが、途中の景色も抜群にきれいなのでプレッシャーなく気に入った場所を到着地点に楽しめる。途中に位置する美しい湖Laguna Capriまでのハイキングも12㎞のいい距離で歩きやすくおすすめ。Poincenot と Río Blancoと二か所のキャンプ場があり、泊りでゆっくりと周ることもできる。

初秋の山頂は雪模様。

 

⛰Laguna Torre(24㎞)全長24㎞のCerro Torreに続くコースは登り始めこそ息の切れる道だが急な傾斜もなく時間の余裕も持てるので、朝出発すれば意外にゆったりと周ることができる。Torreの山々を背後に据えたLaguna Torreの湖畔で食べるごはんのおいしいこと!

静かな湖畔♪

 

⛰Mirador de Los Cóndores y Águilas(6㎞)エルチャルテンで最も気軽に完歩できるハイキングコース。息の切れる坂を30分ほど登ると山々を背景に広がる草原に辿り着く。それぞれの山から距離はあるが、見渡せば360度、エルチャルテンの景色を包括して楽しめる場所だ。ふたつのMirador(展望台)に座るとその名の通り頭上にはコンドルが舞う。朝焼けや夕焼けもきれいだと評判のコース。フィッツロイ(チャルテン)ほど標高も高くないので風も比較的穏やかで、頂上で読書やお茶が楽しめる。

すべてが壮大!

おまけ
南米にはかつて様々な民族が共存していたわけだけど、パタゴニア南部に起源を持つマプチェ(Mapuche)はヨーロッパからの侵略を受けた後も生き残った数少ない民族のひとつで、現在もたくさんの人がその文化や慣習を引き継いで暮らしている。そうでなくともチリ人の多くがマプチェの血を継いでいるのは、アルゼンチンと異なりチリはヨーロッパからの侵略者が男性ばかりだったので必然的に原住民との融合が進んだからなんだって。チリ人の多くがヨーロッパでもないアジアでもアフリカでもない独特の容姿をしているのも、ルーツはここにある。パタゴニアの自然と融和して長い間持続的に世代交代してきたマプチェをはじめとする様々な原住民の暮らしは知識が深く知るほどにおもしろい。

プーコンの公園にはマプチェの木彫りがたくさん。