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悪魔の蘇る日

Jan 2, 2020 | Uncategorized, 旅の便り

食べすぎと運動不足で体がだるいので少し歩こうと散歩に出たらそのまま元旦登山になった。町の外れにある岩山をてっぺんまで登って更に歩いて反対側に出ると、虹色に折り重なるオルノカルの山が見える。この辺りの山々に魅せられたのは私だけじゃない。原住民の間では「訪れる者を離さない」と知られる、インカ文明のそのまた前の文化が生きる地域だ。何度も戻ってくる私に「だったらここで働いたら?」と誘ってくれた人があって、ウマウアカのこのホステルで手伝いを始めた。ウェブサイトの立ち上げを年内に完了しようと少し焦ったりしたけれど、こんな場所にいてそんな打算もなんだか空しいので「締め切り」は先に延ばすことにした。

年の暮れ、スタミナたっぷりの点滴に長いこと命を引き伸ばされていた祖母の魂にやっと安穏が降りた。もう長くないと私が別れを告げたのが3月のことで、不死身なのかとも思ったが、そんなわけはない。元旦は通夜で日本の家族は慌ただしいが、長いこと痛々しい母親の姿を見てきた母も少しほっとしたのかもしれない。

雨季のこの時期、早い夕方から雷雨が来ることが多い。向かい風に逆らってゆっくりと動く厚い雲が同じペースでついてくるので、速足で岩山を降りた。遠くから楽器が聴こえる。町に祭りを運ぶ集団コンパルサ(Comparsa)の集会があるので今日は小さなカルナバル(カーニバルのこと)が催されると、一緒に働くマリアが教えてくれた。本格的なカルナバルは2月で、およそ1週間続く。大地に眠る悪魔を掘り起こす行事で、人も皆、その時期には心のうちに潜む悪魔を解放し魂の望むままに行動する。そんなわけでカルナバルにカップルで来るのはNGなんだとか。

粋だねえ。

この文化はインカ以前からのもので、カトリック旋風にも生き延びてこの地にのこった。小さな町角のアートにもカルナバルの精神が鮮やかに描かれている。楽器の音が近くなり遠くなり、子供のころ祭りの掛け声と笛の音を追って神輿を探したのを思い出した。道の先に楽器の集団が横切って、疲れた足の歩調も速まる。