クカバラベーカリー
雑記帳

Kookaburra

bakery

フィオナ。

Nov 20, 2018 | オーストラリア, メルボルン, 旅の便り

フィオナはいい裁判官だった。公平で、皆に厳しく、皆に真摯で、分厚い眼鏡の向こうにあたたかい光がいつも静かに灯っている。
友達の裁判がとりあえず決着して、皆でコーヒーを飲みながら一息ついた。前の交際相手との裁判を彼女が始めたのが半年ほど前のこと。心細いだろうからと裁判に付き添ってきたけど、こういう機会もそうそうないからこういっては何だがけっこうおもしろかった。法律ってとても大事なようででもなんだか中身のないゲームみたいなもの。考えたら裁かれるほうも人間なら裁くほうも同じ人間で、人間社会に絶対的正義なんてそもそも存在しないから、私たちはみな合意点を見つけて社会生活を維持しているんだけど、法律とか裁判とか判決とか、扱う以上はそれを信じてやらなきゃ速やかに事が進まないから、裁判所の部屋に入ったら聖書に手を置かない聴衆も、大抵いったんは法律の子供になってそこにどっぷりと身を委ねる。
「フィオナは今日も光ってたねー」なんてみんなで裁判のことを話す。フィオナが担当の裁判官だったことは友達にとってとても幸運だった。弁護士の話じゃ裁判官が情のないおバカだとなかなか事が運ばず裁判費用もかさむらしい。フィオナとは実は私たちの中での呼び名で、どうしてフィオナがフィオナになったかと言うと、私が”My honour”(マイオナー)をフィオナだとずっと勘違いしていたからだ。それ以来私たちの間で彼女はフィオナなのだ。
厳しい裁判官の前で弁護士も緊張して発言するんだけど、皆が「裁判長、この件に関してはー」なんて硬い発言をするたび、私の耳にはフィオナという名前が響いて、三度の裁判を終えてフィオナに対する親近感は底知れない。
フィオナよ、ありがとう。これからもいい裁判官でいてね。