クカバラベーカリー
雑記帳

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密会の場所へ。

Apr 7, 2019 | Uncategorized, 旅の便り

姉とモロッコを訪れたのはもう10年以上も前のこと。


バルセロナから始まった姉妹旅行は、そのまま船でマラケシュまで路を延ばした。無防備で無計画な若き姉妹は、まったくひょんなことからある家族のところでお世話になった。薄暗い路地の奥の、明るくあたたかい家。よく人が集まる。見たことのないほど大きいタジン鍋をみんなで囲んで、吹き抜けの空の下で眠りについた。豆の多い食事でおならがよく出た。自分たちのおならで目が覚めて、そしたらどこかから軽快なおならが返ってきて、翌朝姉と思い出してけらけら笑った。なんだか最後まで、どれがどれで誰が誰なのか手探りで。
モロッコで私たちは本当にたくさんのやさしさに触れ、助けられてばかりだったけど、マラケシュの街はなかなか荒々しくて、気を張っていることが多かった。わたしたちは本当にラッキーだったと思う。信用できるかどうかは相手の顔を見ればわかるとも、やっぱり言い切れないから。みんな事情も違うし。あんな旅はもうできないと、あの時のことを振り返っては思うけど、あんな旅ができてよかったとも、ふたりどこかでこっそりと思っている。そうして時々共有する記憶の奥で私たちは密会して、思い出話に花を咲かせるのだ。
「お兄さんが病気でなくなったらしいよ。」って、姉から連絡が来た。マラケシュへ向かう船でこの人に出会って、私たちのあの旅が始まった。姉が転送してくれた写真には、すっかり痩せてでもなんだかあか抜けた姿。厳しいようなとてもやさしいような顔が懐かしい。
姉とわたしとの旅はなんだかいつもお茶してばかりで、思い返せばマラケシュもこれと言って特にどこへも行っていない。思い出すのはブラブラと過ごした街の断片だったり、ごみ袋いっぱいのパンをさげたおじいさんの茶色い上着だったり、恥じらう私たちからパンツをひったくった洗濯屋のお姉さんの頭に巻かれたスカーフだったり、なんかそうゆうもの。

そういえばお兄さん、いつも煙草をぶかぶか吸っていたっけ。拾ってきた外国人を律儀な弟と家族に丸投げして久しぶりに会う仲間と飲み歩くのに忙しいお兄さんと、私たちは一度お茶をしに出掛けたことがあった。甘いお茶を小さなグラスに分けてくれる。アラビア語は難しいねなんて、話していたのを覚えている。言葉が通じないわたしは観察するばかりで、この人はきっとこうしていろんな人を拾ってくるのだろうと、二日酔いの横顔を見ながら思った。また会いたいねってちょうど姉と言っていた。ちょっと遅かった。でも、あのとき会えてよかった。

ークカバラベーカリーの中南米旅行記???アルゼンチン編